トニック・ドミナント・サブドミナント:コードの機能とその見分け方

コードの機能を表す、トニック、ドミナント、サブドミナントについての解説とその見分け方まで解説します。

コードの機能

音楽は緊張と緩和(安定)を繰り返すことで進行感が生まれ、聴いていて心地よく感じます。

その音楽の流れをつくるうえで、コードは非常に重要な役割を果たしています。

各コードは、トニック(安定)、ドミナント(緊張)、サブドミナント(どちらでもない)に分けられ、その役割ごとにコード進行の流れをつくります。

なぜ重要か

ここら辺の知識は特に重要とされています。

コードの機能が分かると、次に進みたいコードをある程度特定できるようになりますし、それらの機能を理解したうえで多くのテクニックを使えるようになります。

残念ながら、この部分は多くの教本や参考書では表面的な説明しかなく、コードの機能の見分け方についてはほぼ触れられません。

恐らく説明が雑多になるのを避けるためだと思われますが、音楽理論は応用ができてこそ価値があるものですから、多少説明が難しくなったとしても、この記事では原理から説明しようと思います。

コードの機能に影響を与える要素

当たり前ではありますが、基本的にコードの機能はそのコードが持つ音高の特徴に左右されます。

安定した響きの音高が多く含まれるコードは安定した響きになりやすいですし、逆に不安定な音を多く含むコードは不安定な響きになることが多く、調性外(ダイアトニックスケール外)の音高を使った場合も同じです。

更に詳しく言うと、コードの機能はコード構成音だけでなく、その音程間隔、スケール(またはスケールの特性音)などに影響を受けています。

このように、コードの機能に影響を与える要素は様々ありますので比較的幅広い知識が必要になりますが、一度覚えてしまえば楽ですのでしっかり押さえておきましょう。

ギン

各音高の特色については「メジャースケールとマイナースケールの各音の特色」の記事を参考にして下さい。

特性音

コードの機能に影響を与える要素の一つに、「特性音」というものがあります。

特性音とは、特定のスケールを特徴付ける音のことです。

個性が強くそのスケールを印象付けてくれる半面、よく考えて使う必要があります。

例えば、本来落ち着けるはずのトニック機能を持つコードにそのスケールの特性音を加えると、落ち着けるコードとしての機能が失われます。

これは、特性音がスケール構成音のうち特に安定する音高と♭9(フラットナインス:不協和する半音間隔)を作りやすいためです。

このように、特性音は安定感を阻害するコードになりうるため、特性音を含むコードは安定感が失われることが多いです。

特性音はスケールごとに異なり、メジャースケールでは第4音(CメジャースケールではFの音)になります。

一応主要なスケールとその特性音をまとめておきましたので参考にして下さい。

主要スケールとその特性音(Characteristic Pitch)一覧

Cイオニアン

Cドリアン

Cフリジアン

Cリディアン

Cミクソリディアン

Cエオリアン

Cロクリアン

リーディングトーン

リーディングトーンとは、半音上行して主音(トニック)に行きたがる働きをもつ音高のことです。

非常に不安定な音で主音に戻ろうとする強い力があるため、コードの機能にも大きな影響を与えます。

リーディングトーンは半音上が主音ですからスケールの第7音に当たりますが、スケールによっては第7音が主音と半音ではなく全音離れてしまう場合もあります。

その場合の第7音はサブトニックとよばれ、リーディングトーン程主音への誘因力はありません。

トライトーン

トライトーンとは、全音3つ分の音程間隔のことを指します。

先程のリーディングトーンは音高の名前でしたが、トライトーンは音程間隔の名前ですので混乱しないようにしてください。

音自体は非常に不安定で、コード構成音の音程間隔にこれが含まれるとコード自体も緊張感のあるコードになってしまいます。

またトライトーンは隣り合う音に、それぞれ反行して解決するという特徴があります。

それでは、コードの機能に影響を与える要素を理解したところで、実際に機能ごとに見ていきましょう。

トニック機能を持つコード

トニック機能を持つコードとは、スケールの特性音を含まないコードのことです。

しかし、特性音を含んでいなければ全てトニック機能を持つコードとして分類されるというわけではありません。

トニック機能を持つコードの特徴としてこれが挙げられるというだけで、コードの機能を判別する際は総合的に見て判断する必要があります。

Cメジャースケールの場合以下の3つがトニック機能を持っています。

メジャースケールの特性音である第4音(CメジャースケールだとF)がどのコードにも含まれていないことを確認してください。

コードの響きは各音高の特徴にも左右されるといいましたが、この場合主音がルートに来ているCが最も安定しており、落ち着けるコードとしての機能が最も強いです。

トニック機能を持つコードの特徴

トニックコードは、安定感があり落ち着いた響きを持っています。

そのため、緊張感のあるコードから、トニック機能を持つコードに帰ってくると安定感(着地感)が生まれます。

逆にトニックコードばかりを使うと、安定感はありますが面白みがなく盛り上がりに欠けます。

基本的には、曲の初めや終わりのコードとして使われます。特に曲の終わりは、誰が聴いても「終わった」と思わせる必要がありますから、ほとんどがトニック機能を持つコードでおわります。

トニックマイナー

マイナーキーでのトニックコードをトニックマイナーと呼ぶことがあります。

トニック機能を持ちつつ、サウンド自体はマイナー感が強いのが特徴です。

Cマイナースケールでは以下の2つです。

これ以外のコードでも、マイナー特有の短3度(上の例ではE♭)を持ちつつトニック機能を持つコードは、トニックマイナーのような振る舞いをしてくれるはずです。

また、「トニック機能を持つコードはメジャーキーで3つあったのに何でマイナーキーでは減ったの?」と疑問に思った人もいるかもしれません。

そこまで重要な知識ではないですが、原理から理解することを目標にしているため気になる人は以下をどうぞ。(ちょっとムズカシイです。汗)

なぜマイナースケールではトニック機能を持つコードが減るのか。

メジャーキーでは、Ⅰ、Ⅲ、Ⅵがトニック機能を持っていました。

これからすると、マイナーキーでもⅠ、Ⅲ、Ⅵがトニック機能を持ちそうですが、コードの構成音が異なればコードの機能も変わってしまうためそうはいきません。

仮にCマイナーキーでトニック機能を持つコードを調べたければ、全く同じスケール構成音を持つE♭メジャーキーと比較する必要があります。全く同じ構成音を持つスケールは全く同じコードを持っているはずだからです。

メジャーキーであればⅠ、Ⅲ、Ⅵがトニックですから、E♭メジャーキーもⅠ、Ⅲ、Ⅵ (E♭、Gm、Cm)がトニック機能を持っていることになり、この(E♭、Gm、Cm)はCマイナースケールのⅠ、Ⅲ、Ⅴに当たります。

しかしながら、マイナースケールの場合は、このうちのⅤ:Gm(G B- D)の1度(G)がスケール構成音の短6度(A-)と♭9の音程間隔になり、5度(D)もスケール構成音の短3度(E-)と♭9になってしまいます。

もとよりトニック機能を持つコードが特性音を持てないのは、特性音がその他のスケール構成音と♭9をつくりやすいからでしたが、マイナースケールでは音階の違いによって特性音ではない音でも♭9が生まれやすくなってしまい、その結果マイナースケールのⅤに当たるGmはトニック機能を持っていないというわけです。

そのため、マイナーキーでトニック機能を持っているコードはⅠ、Ⅲ(正確にはⅠ-、♭Ⅲ)のみです。

難しく感じたかもしれませんが、♭9のせいでコードの安定感が失われるという考え方自体は特性音と全く変わりません。

ギン

トニック機能を持つコードをマイナーにすればトニックマイナーになるわけではありませんので注意して下さい。

ドミナント機能を持つコード

そもそもドミナント機能とは、主音で解決したがる特性のことです。

実は、このドミナント機能を持つコードに関しては定義が曖昧で、参考書や教本などでも解釈が違うことがあります。

しかしながら、重要なのは機能を見分けることではなく、コードの特性を理解して実際に活用できるようになることですから、どの音がコードの特性に影響を与えているのかをしっかりと理解しておくと柔軟に対応できます。

コードに影響を与える要素は、主に以下のようなものが挙げられます。

  • リーディングトーン → 不安定・主音での解決を促す
  • 解決先の5度上の音 → 安定・主音への進行を促す
  • トライトーン → 非常に不安定・それぞれ隣り合った音への解決を促す

ギン

5度の音はその時の聴き手の調性感によって左右されます。例えば転調しているときは、転調先のスケールの5度の音ということになります。

個人的には、ドミナント機能を持つコードとは、リーディングトーンを構成音に含み、解決先の5度上の音をルートにもつコードだと考えています。

しっかりとしたトーナリティがあれば(どの音が主音なのかが音楽の中ではっきりしていれば)、この2つだけでも十分な解決感を感じることができるはずです。

更にこれにトライトーンが加わることで解決感が増します。トライトーンによってコードの安定感がさらに失われるため、解決した際の安定感を強く感じることができるからです。

トライトーンは本来主音での解決を促すわけではありませんが、トライトーンのうち片方がリーディングトーンの位置にある(CメジャースケールのFとB等)場合、相乗効果で主音での解決感を強く感じさせることもあります。

そのためこのような場合も、ドミナント機能を持っていると考えていいかもしれません。

以上の点から考えると、Cメジャースケールでドミナント機能を持っているのは以下の2つです。

Gはリーディングトーンと5度の音を含んでいるのでドミナント機能を持っています。

Bm(-5)に関しては、リーディングトーンとトライトーンを持っていますが。Cメジャースケールの主音であるCの五度上の音(G)を構成音に持ちません。

そのため場合によってはドミナント機能を持っていないと解釈されることもありますが、トライトーンのうち片方(B)がリーディングトーンの位置にありますから、主音での解決感は十分感じられるはずです。

それぞれ主音で解決した時の解決感を聴き比べてみて下さい。

いずれにしても、ドミナント機能があるか無いかを見分けられるかはさほど重要ではありません。

結局は聴いてみて自然な解決感があればいいのですから、人間の感覚的な部分に関しては細かい定義は気にしなくてもいいでしょう。(説明したけど….汗)

それよりも、先程説明したコードの響きに影響を与える要素をしっかりと理解しておく事の方がよっぽど重要です。実際うまくいかない場合、なぜ着地感がないのか、どの音が必要なのかが理解できるからです。

ドミナント機能を持つコードの特徴

ドミナント機能を持つコードの最大の特徴は、なんといってもその緊張感と主音との結びつきです。リーディングトーンという不安定な音高を含みますし、場合によってはトライトーンも含みますから、かなり緊張感があります。

そのため、安定感のあるトニック機能を持つコードの直前におくと、スムーズな進行をつくることができます。

しかしながら、最も解決感が強いのはやはり主音への解決です。

ちなみに、ルートがどんな音高でも5度下に解決すれば多少なりとも解決感が生まれるため、この特性を上手く利用したセカンダリードミナントというテクニックもあります。

音は隣り合う音だけでなく、5度下の音とも結びつきが強いことを覚えておくと、コード進行を考えるうえで役に立ちます。

ドミナントマイナー

マイナースケールのダイアトニックコードでサブトニック(主音と全音間隔の第7音)を3度かルートに持つコードをドミナントマイナーと呼ぶことがあります。

コードの機能自体はドミナントですが、マイナー的な雰囲気を持つという特徴があります。

Cマイナースケールでは以下の2つです。

これらのコード以外でも、ドミナント機能を持つコードのうちリーディングトーンの代わりにサブトニックを持つコードは、ドミナントマイナー的なサウンドを持っていると考えていいでしょう。

サブドミナント機能を持つコード

サブドミナント機能を持つコードとは、スケールの特性音を含みリーディングトーンを含まないコードのことです。

Cメジャースケールでは以下のコードがサブドミナント機能を持っています。

サブドミナント機能を持つコードの特徴

サブドミナント機能を持つコードは、トニックほどの安定感はないにしろドミナントほどの不安定感もないという、どっちつかずの特徴を持っています。

ほとんどの場合はトニックと同じような使い方ができるのですが、落ち着けるコードという使われ方よりも、コード進行のバリエーションとしての使われ方がほとんどです。

また、サブドミナント始まりの曲は多く見かけますが、サブドミナント終りの曲は少ないです。

トニック機能を持つコードほど安定はした響きを持たないため、ドミナントから進行しても解決感が薄いからです。

サブドミナントマイナー

マイナースケールの特性音は短6度(Cマイナーだと♭A)になります。

このマイナースケールの特性音をもちリーディングトーンやサブトニックを含まないコードを特別にサブドミナントマイナーと呼んでいます。

コードの機能自体はサブドミナントですが、マイナー的な雰囲気を持ちます。

Cマイナースケールでは以下の3つがサブドミナントマイナーです。

同じように、サブドミナント機能を持つコードのうちマイナースケールの短6度を構成音に持つコードはサブドミナントマイナー的な響きを持つと考えられます。

機能の見分け方実践

これまで取り上げた機能の見分け方は「その調性内で作られるコード(ダイアトニックコード)」にのみ当てはまるものですが、ダイアトニックコードではないコードが出てきた場合もコード構成音からある程度機能を見分けることができるようになります。

実際にどのようにコードの機能を見分けることができるのか少しだけ紹介します。

いずれもCメジャースケールの場合、以下のコードをこのように分析することができます。

・G7sus4 (G C D F) → 特性音Fを含み、リーディングトーンBを含まないためサブドミナント機能を持っている。ルートのGはスケールの5度の音なので、主音での解決を促すドミナント的な役割も持っているはず。

・B7 (B D# F# A) → リーディングトーンのBがあり、D#とAはトライトーンなのでドミナント的な響きのはず。D#が隣り合うEに解決し、リーディングトーンのBがCに解決すると、次のコードはC(C E G)が使えるが、ルートのBの5度下はEなので、Em(E G B)の方が解決感が強いかもしれない。

・Caug (C E G#) → 特性音もリーディングトーンも含まないためトニック的だが、調性外の音高のG#があるため安定感はない。G#は隣り合う音のGかAに解決したがるはずなので、それらをルートに持つC(C E G)やAm(A C E)に行きやすいかもしれない。しかしルートのCの5度下はFなので、F(F A C)の方が解決感が強いはず。

・CM7 (C E G B) → リーディングトーンを持っているが、特性音は含まれていないためトニック機能を持っている。リーディングトーンがあるぶん三和音の時より安定感は失われるはず。

不安定な響きのコードは、ルートの5度下や、リーディングトーンやトライトーンの解決先を基にコードを落ち着かせることができないかを考えると、次のコードをさがす糸口が見えてきます。

ほんの一例でしたが、コードの機能を特定する場合どのように考えればいいのかというイメージが湧けばと思います。

まとめ

まとめましょう。

  • コードの機能には、特性音、リーディングトーン、トライトーン等が影響している
  • トニック機能を持つコードとは、スケールの特性音を含まないコードのことで、落ち着けるコードとしての機能を持つ
  • ドミナント機能を持つコードとは、リーディングトーンを構成音に含み、解決先の5度上の音をルートにもつコードのことで、主音での解決を促す機能を持つ
  • サブドミナント機能を持つコードとは、スケールの特性音を含みリーディングトーンを含まないコードのことで、コード進行のバリエーションの為に欠かせない

コードの機能の特定には、比較的幅広い知識が必要になりますので慣れないうちは難しく感じるかもしれませんが、ひとつひとつ理解していけば決して難しくありません。

非常に実用的で役立つ知識になりますから是非マスターして下さい。